概要

会長挨拶

 我々水族館は、社会の多様化とともに様々な役割を担うようになりました。地域交流、観光の拠点、環境教育の啓発、自然環境の保護保全、生物多様性など、今では求められている役割は多岐に渡ります。また水族館という施設自体も、公共・民間施設のように設置体や経営体が違うことはもちろん、施設規模、地域性、飼育生物など、それぞれ多様な特色や特性を持ち、それぞれに合った役割を担ってきました。

 一方で、大規模な災害への対策、労働人口減少による雇用問題、インバウンド対策、展示生物の確保、医療技術の高度化、動物倫理など、多様な水族館のあり方に関係なく、水族館が直面している共通の課題も多くなっています。これら諸問題の解決のためには、水族館それぞれの立場や自主性を尊重しつつ、水族館だけでなく行政や各種団体とネットワークを組み、対処する必要性を感じております。

 上記のような現状を鑑み、「一般社団法人日本水族館協会」を、広く水生生物を飼育展示する日本で初めての水族館を主体とする法人組織として、設立することとなりました。水族館が将来に渡り継続的に発展するため、水族館の社会的役割を明確にし、地域の皆様をはじめとして行政、漁業従事者、研究者、教育機関、研究機関、企業など、多くの皆様と連携し、愛され続ける施設であり続けるため、有益な事業を行ってまいります。

 本協会への一層のご理解、ご協力、そして皆様の積極的な協会活動へのご参画を何卒よろしくお願い申し上げます。

2019年11月22日

一般社団法人日本水族館協会
会長 石橋 敏章
(下関市立しものせき水族館 館長)

一般社団法人日本水族館協会

 本協会は、水族館等が持つ多様な機能や役割、魅力を維持・向上するための事業を展開し、水族館業界の持続的な発展を目指し、令和元年11月22日に設立しました。1年間で延べ3,500万人以上の来館者が訪れ、国民から広く愛されている水族館業界が一致団結し、「水族館の、水族館による、水族館のための組織」となることをスローガンに、水生生物の飼育展示・教育研究・保護保全活動を行う水族館の独自性を尊重し、各種情報共有や連携を密にし、共通する課題の解決に向けた事業を行ってまいります。

協会の目的

 本協会は、科学的根拠に基づく水生生物資源の持続的利用の立場から水生生物の飼育展示・教育研究・保護保全活動を推進し、海洋立国である我が国の海洋教育に寄与するとともに、もって我が国固有の文化伝統の維持、科学技術の振興および自然環境の保護保全に貢献することを目的とします。(定款第3条より)

協会の事業

 我々は、水族館等に関連する次の事業を行ってまいります。

(1) 水生生物飼育施設の管理や運営に関する調査研究及び相互支援事業
(2) 水生生物の飼育や繁殖に関する資料の収集
(3) 種の保存および水生生物の持続的な利用に関する調査研究
(4) 職員の研修や教育活動の企画、運営、開催
(5) 水族館等の活動を正しくご理解いただくための広報活動やイベントの開催、協力
(6) 水生生物及び水族館等に関連する出版物等の発行

協会の基本方針

 我々は、正会員(水族館等)の連携を密にして飼育技術の向上をはじめとする人材育成に寄与するとともに、水族館にお越しいただくお客様、飼育展示する水生生物をご提供くださる漁業者の皆様、ご賛同いただく企業の皆様、行政関係者、研究者の皆様とともに、水族館等の持続的発展を目指して活動を行います。

 しかし水族館等の施設は、設立目的や規模・運営形態など、それぞれの置かれている環境や状況はすべて異なります。

 その事情を鑑み、協会は多くの水族館に共通する課題や、将来に向けて必要な取り組みを会員間で協議し、それぞれの会員の自主性を尊重し、決定に基づいて事業を行ってまいります。

① 野生からの生物入手に関する考え方
水族館で展示飼育する水生生物のほとんどは、科学的根拠に基づいて資源量が充分であると国が認めている水産資源です。食材としても身近な水生生物の生体を展示飼育することで、命や自然環境保全の大切さを皆様にご紹介すること、ならびにその生態解明に向けた研究の一助を担うことは、我々水族館の使命です。
そのため、様々な法令を遵守し、漁業者のご協力を得て、必要最小限の水生生物を野生から入手することは、繁殖等を含めた生物入手方法の一つであると考えています。

② 動物福祉に関する考え方
水族館にお越しのお客様が水槽をご覧になった際、「おいしそう!」と感想を述べられることがあります。これは、我々にとって誉め言葉です。それは、展示飼育している水生生物が、生き生きと健康的に暮らしている証だからです。
このように、我々は展示飼育する水生生物すべてについて、常に飼育環境の改善や飼育技術の向上を目指します。

③ 希少生物に関する考え方
科学的根拠に基づいて資源量の枯渇が懸念される希少生物については、人工的な繁殖技術の確立や生息環境保全の促進など、関係する皆様とともに種の保存に関する取り組みを行います。